「歯周病ですねと言われたけれど、何を調べているの?」
「他院ではすぐ抜くと言われた。本当にそれだけ?」
歯周病の治療で、いちばん最初に、そしていちばん大切になるのが検査(診査・診断)です。
歯周病は、初期にはほとんど自覚症状がありません。さらに、歯ぐきの奥で起きていることは、見ただけでは分かりません。だからこそ、「今、どこで・どれだけ・なぜ進んでいるのか」を正確に把握する検査が、すべての治療の土台になります。
この記事では、歯周病の基本的な検査に加えて、専門的な治療を見据えて当院が行う精密な「資料どり」まで、歯科医師の立場でご説明します。
歯周病専門医として、私が最も大切にしているのが、この「診査・診断」です。
同じ「重度歯周炎」でも、骨の溶け方、噛み合わせ、歯の位置は一人ひとりまったく違います。「抜くしかない」と言われた歯でも、精密に診ると残せる可能性が見えてくることは少なくありません。そのために、当院では必要に応じて、一般的な検査よりも踏み込んだ資料を集めます。検査は、患者様の歯を最後まで残す道を探すための“地図づくり”だと考えています。
※ 本記事は、日本歯周病学会 歯周病専門医の監修のもと、米国歯周病学会(AAP)・欧州歯周病連盟(EFP)の国際的な分類を参考に作成しています。
目次
- なぜ歯周病の検査がそれほど重要なのか
- 基本となる歯周組織検査
- レントゲンで「骨」を見る
- 当院が行う精密な検査(資料どり)
- なぜ、ここまで資料を集めるのか
- 検査結果から診断
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. なぜ歯周病の検査がそれほど重要なのか
歯周病は「歯ぐきの炎症」から始まり、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が失われていく病気です。骨がどれだけ失われたかは、見た目では分かりません。
検査とは、見えない歯ぐきの奥と骨の状態を「数字」と「画像」で見える化する作業です。
正確な検査なしに立てた治療計画は、地図を持たずに山に登るようなものです。とくに、再生療法や歯周外科、インプラントなどの専門的な治療では、精密な検査が結果を大きく左右します。
2. 基本となる歯周組織検査
歯周ポケット検査(プロービング)
「プローブ」という目盛りのついた細い器具で、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)の深さをミリ単位で測ります。チクチクと感じるのはこの検査です。
- 1〜3mm:健康な状態
- 4〜5mm:進み始めているサイン
- 6mm以上:進行した状態の可能性
出血のチェック(炎症のサイン)
検査時に出血があるかを確認します。出血は「今まさに炎症が起きている」という大切なサインです。
歯のグラつき(動揺度)
歯を軽く動かし、グラつきの程度を確認します。骨が失われるほど、歯は動きやすくなります。
3. レントゲンで「骨」を見る
ポケット検査では分からない「骨がどれくらい残っているか」は、レントゲンで確認します。歯周病は“骨の病気”でもあるため、骨の評価は欠かせません。
4. 当院が行う精密な検査(資料どり)
難症例や専門的な治療を検討する場合、当院では、基本検査に加えて次のような精密な資料を必要に応じてお取りします。これは、より正確な診断と治療計画、そして治療前後を客観的に比較するためです。
① パノラマX線写真
お口全体を一枚で写すレントゲンです。顎の骨全体、親知らず、顎関節まで含めて、全体像を把握します。

② デンタルX線(14枚法)
歯を1本ずつ精密に撮影し、全体で14枚に分けて記録します。パノラマよりも細かく、1歯ごとの骨の状態を評価でき、歯周病の精密診断に適しています。

③ 規格化した口腔内写真
正面・側方・噛む面などを規格化して撮影します(11枚法に加え、噛み合わせのガイド時の写真や、半開口の写真なども)。むし歯、歯ぐきの色・形、歯並び、噛み合わせを記録し、治療前後の変化を客観的に比較できます。

④ 顔貌写真
お顔の骨格や顎の全体のズレやとお口元のバランス、笑ったときの見え方を記録します。審美や噛み合わせを含めた総合的な治療計画に役立ちます。
⑤ 動画撮影
笑ったとき・話すときの口元や歯ぐきの動きは、静止画だけでは分かりません。動画で動きのある状態を記録します。
⑥ 口腔内スキャナー(IOS)
お口の中をデジタルでスキャンし、歯型や噛み合わせを立体データとして記録します。型取りの負担が少なく、被せ物を作ったり、経過の比較やシミュレーションにも活用できます。

⑦ 歯科用CT
骨を立体(3D)で把握できる検査です。平面のレントゲンでは見えない骨の幅や形、神経・血管の位置までわかり、歯周外科・再生療法・インプラントの精密な計画に欠かせません。

5. なぜ、ここまで資料を集めるのか
精密な資料は、「その歯を残せるかどうか」を見極めるための判断材料です。
難しい症例ほど、平面のレントゲンや見た目だけでは判断できません。骨の立体的な形、噛み合わせ、歯ぐきの状態を多角的にそろえてはじめて、「抜かずに残す方法はないか」を本気で検討できます。
また、こうした資料は、治療前後を比べる客観的な記録にもなり、患者様ご自身が変化を確認するうえでも役立ちます。検査は手間も時間もかかりますが、これが専門的な治療の質を支えています。
6. 検査結果から「ステージ・グレード」を診断
これらの結果を総合して、歯周病の進行度を診断します。現在は、米国歯周病学会(AAP)と欧州歯周病連盟(EFP)が共同で定めた国際的な分類(2017年)が用いられ、進み具合を「ステージ(I〜IV)」、進行リスクを「グレード」で評価します(Caton ら, 2018年)。この診断にもとづいて、一人ひとりに合った治療を組み立てます。
7. よくある質問(Q&A)
Q. 検査はすべての人にここまで行うのですか?
A. いいえ。お口の状態や、検討する治療の内容に応じて、必要な検査を選びます。すべての方に全項目を行うわけではありません。
Q. 検査は痛いですか?
A. 炎症がある部分は多少チクッとすることもありますが、強い痛みを伴う検査ではありません。気になる方は事前にお伝えください。
Q. 他院で撮ったレントゲンは使えますか?
A. 参考にできる場合があります。セカンドオピニオンをご希望の際は、お手元の資料をお持ちいただくとスムーズです。
8. まとめ
- 検査は、見えない歯ぐきの奥と骨を「見える化」する、治療の土台
- 基本検査(ポケット・出血・動揺・レントゲン)に加え、必要に応じCT・口腔内スキャナー・規格写真・動画など精密な資料を取る
- 精密な資料は「その歯を残せるか」を見極めるための判断材料
- 結果をAAP/EFPの国際分類で診断し、その方に合った治療へつなげる
「抜くしかない」と言われた歯でも、まずは正確に診ることから始まります。
精密な検査は、歯を残す可能性を最後まで探るための第一歩です。他院での診断に迷いがある方、セカンドオピニオンをご希望の方も、どうぞお気軽にご相談ください。
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参考文献
本記事は、米国歯周病学会(AAP)・欧州歯周病連盟(EFP)の分類(PubMed収載)を参考に作成しています。
1. Caton JG, Armitage G, Berglundh T, et al. A new classification scheme for periodontal and peri-implant diseases and conditions – Introduction and key changes from the 1999 classification.(AAP/EFP 2017 World Workshop)J Clin Periodontol. 2018;45(Suppl 20):S1-S8. doi:10.1111/jcpe.12935
※ 本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療の推奨を行うものではありません。お口の状態には個人差がありますので、具体的なご相談はかかりつけの歯科医師までお気軽にお申し付けください。
