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歯ぐきの移植(歯肉移植・FGG/CTG)とは?下がった歯ぐきを回復する治療を歯周病専門医が解説【両国デンタルクリニック】

2026.10.31

「歯ぐきが下がって、歯が長く見える」
「歯の根が出て、しみる・見た目が気になる」

そんなお悩みは、下がってしまった歯ぐきを、移植で回復させる治療で改善できることがあります。

それが「歯肉移植(しにくいしょく)」——専門的にはFGG(遊離歯肉移植術)やCTG(結合組織移植術)と呼ばれる治療です。

この記事では、歯ぐきの移植とはどんな治療なのか、FGGとCTGの違い、どんな人に向いているのかを、歯周病専門医の立場からやさしくご説明します。

「歯ぐきが下がったのは、もう戻らない」とあきらめている方は少なくありません。

たしかに、下がった歯ぐきが自然に元へ戻ることはほとんどありません。しかし、移植という方法を使えば、歯ぐきを回復させられることがあります。見た目だけでなく、しみる症状やこれ以上の悪化を防ぐことにもつながる——歯を長く守るための、大切な治療のひとつです。

※ 本記事は、日本歯周病学会 歯周病専門医の監修のもと、学術論文を参考に作成しています。


目次

  1. 歯肉移植ってどんな治療?
  2. なぜ歯ぐきの移植が必要になるの?
  3. FGG(遊離歯肉移植術)とは
  4. CTG(結合組織移植術)とは
  5. FGGとCTGの違い・使い分け
  6. 治療の流れと、採取した場所の治り方
  7. よくある質問(Q&A)
  8. まとめ

1. 歯肉移植ってどんな治療?

歯肉移植とは、歯ぐきが足りない部分に、別の場所(多くは上あごの内側)から歯ぐきの組織を移植して補う治療です。

「足りない歯ぐきを、自分の組織で増やす・厚くする」——それが歯肉移植です。

これにより、下がった歯ぐきで露出した歯の根を覆ったり、薄く弱い歯ぐきを丈夫にしたりできます。多くの研究をまとめた分析でも、自分の組織を使った移植(FGG・CTG)は、歯ぐきを増やし・厚くする効果が最も優れていると報告されています(Barootchi ら, 2020年)。


2. なぜ歯ぐきの移植が必要になるの?

歯ぐきの移植が検討されるのは、主に次のようなケースです。

  • 歯ぐきが下がった(歯肉退縮):歯の根が露出し、しみる・見た目が気になる・むし歯になりやすい
  • 丈夫な歯ぐき(角化歯肉)が少ない:歯ぐきが薄く弱いと、歯みがきで傷つきやすく、さらに下がりやすい
  • これ以上の悪化を防ぎたい:歯ぐきを厚くすることで、退縮の進行を抑える

とくに、歯ぐきが薄い方は退縮が進みやすいため、「守り」として歯ぐきを厚くする目的でも行われます。歯ぐきの下がり自体については、歯肉退縮の記事でくわしく解説しています。


3. FGG(遊離歯肉移植術)とは

FGGは、上あごの内側(口蓋)から表面の歯ぐきごと(表面の膜を含めて)採取し、歯ぐきが足りない部分に移植する方法です。

おもな目的は、丈夫な歯ぐき(角化歯肉)の幅を増やすことです。歯ぐきが薄く弱い部分を、厚くしっかりした歯ぐきに変えることで、歯みがきしやすく・退縮しにくい環境をつくります。

向いているケース:歯ぐきの「丈夫さ・幅」を増やしたいとき。見た目の影響が比較的少ない奥歯側などで選ばれることがあります(移植した部分の色は、まわりと少し異なることがあります)。


4. CTG(結合組織移植術)とは

CTGは、上あごの内側の表面を残したまま、その内側(下)にある結合組織だけを採取し、歯ぐきの中に移植する方法です。

露出した歯の根を覆ったり、歯ぐきを自然な見た目のまま厚くしたりするのに適しています。色や質感がまわりとなじみやすく、審美的にすぐれているのが特長です。

下がった歯ぐきを覆う治療として、CTG(結合組織移植)と歯ぐきを引き上げる術式の組み合わせは、世界的に「ゴールドスタンダード(標準治療)」とされています(Chambrone ら, 2022年)。

向いているケース:前歯など見た目が大切な部分の歯ぐきの下がりを覆いたいとき。


FGGは上皮と結合組織を一緒に採取し、CTGは表面の上皮を残して結合組織のみを採取する、口蓋粘膜の断面の違いを示す図解
同じ採取部位でも、FGGは「上皮+結合組織」を、CTGは「結合組織のみ」を採取します。この違いが、見た目のなじみや治り方の差につながります。

5. FGGとCTGの違い・使い分け

FGG(遊離歯肉移植術)CTG(結合組織移植術)
おもな目的丈夫な歯ぐきの幅を増やす下がった歯ぐきを覆う・自然に厚くする
見た目のなじみやや色の差が出ることがあるなじみやすく審美的
向く部位奥歯側など前歯など見た目が大切な部分

どちらが適しているかは、歯ぐきの状態・場所・見た目の重要度・目的によって決まります。両方を組み合わせたり、他の歯周外科と併用したりすることもあります。精密な診査のうえで、その方に合った方法をご提案します。


6. 治療の流れと、採取した場所の治り方

FGG・CTGで共通する口蓋からの移植片の採取部位と、術中に移植片を採取する様子の図解
FGG・CTGともに、移植片は上あごの内側(口蓋)の決まった部位から採取します。歯頸部から約2mm離し、太い血管を避けた安全な部位から採ります。
  1. 検査・診断:歯ぐきの厚み・幅、退縮の程度、原因(噛み合わせ・歯みがき圧など)を確認します
  2. 原因への対処:強すぎる歯みがきなど、退縮の原因があれば先に整えます
  3. 移植手術:上あごの内側などから組織を採取し、必要な部分へ移植します
  4. 治癒を待つ:移植した組織が定着するまで、数週間〜数か月かけて経過をみます
  5. メンテナンス:良い状態を保つため、定期的なケアを続けます

組織を採取した上あご側は、FGGでは表面に傷ができるため治るまで数週間ほどかかることがあり、CTGでは表面を残すため比較的治りが早い傾向があります。術後の過ごし方は、事前にくわしくご説明します。


7. よくある質問(Q&A)

Q. 下がった歯ぐきは、移植すれば必ず元どおりになりますか?

A. 覆える範囲や回復の程度は、歯ぐきや骨の状態によって異なります。大きく改善することもあれば、部分的な改善にとどまることもあり、個人差があります。

Q. 痛みはありますか?上あごから採るのがこわいです。

A. 手術は麻酔下で行います。組織を採取した部分に、術後しばらく違和感が出ることがありますが、多くは時間とともに落ち着きます。CTGは表面を残すため、比較的負担が少ない傾向です。

Q. 歯ぐきが下がるのを防ぐ目的でもできますか?

A. はい。歯ぐきが薄く退縮が進みやすい場合、厚みを増やして「守り」を強くする目的でも行われます。

Q. 保険は使えますか?

A. 目的や術式によって、保険適用の場合と自費診療の場合があります。診断のうえでご説明します。


当院での治療例(CTG:結合組織移植術)

CTG(結合組織移植術)の術前術後。術前は歯ぐきが下がり歯根が露出、術後は歯ぐきが回復し根が覆われた症例写真
  • 治療内容:歯肉退縮に対するCTG(結合組織移植術)。下がった歯ぐきを覆い、露出した歯根を被覆する自由診療です
  • 費用(自由診療):110,000円(税込)
  • 治療期間・回数:手術は1回。その後、経過観察のため約3〜6か月かけて数回ご来院いただきます
  • 治療の前提:初診は検査のみを行います。歯ぐきの状態によっては、移植手術の前に歯周基本治療(歯周初期治療)が必要になる場合があります
  • 主なリスク・副作用:術後の痛み・腫れ・出血、一時的な知覚過敏、移植組織が十分に定着しないことがある、歯ぐきが再び下がる(後戻り)可能性
  • お問い合わせ:両国デンタルクリニック TEL 03-3634-3250

※ 本治療は自由診療です。本写真は患者さんの同意を得て掲載した当院での治療例であり、効果には個人差があります。同様の結果を保証するものではありません。


8. まとめ

  • 歯肉移植は、足りない歯ぐきを自分の組織で補い、下がった歯ぐきを回復させる治療
  • FGGは「丈夫な歯ぐきの幅を増やす」、CTGは「下がった歯ぐきを自然に覆う・厚くする」のが得意
  • CTGを用いた歯ぐきの被覆は、世界的に標準治療とされている
  • 見た目の改善だけでなく、しみる症状・退縮の進行を防ぐことにもつながる
  • どちらが向くかは精密な診査で見極めることが大切

下がった歯ぐきは、あきらめなくてもよい場合があります。

「見た目が気になる」「しみる」「これ以上下がるのが不安」——そんな歯ぐきのお悩みも、移植で回復をめざせることがあります。まずは一度、歯ぐきの状態を診させてください。

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参考文献

本記事は、PubMed(米国国立医学図書館の文献データベース)に収載された以下の学術論文を参考に作成しています。

1. Chambrone L, Botelho J, Machado V, Mascarenhas P, Mendes JJ, Avila-Ortiz G. Does the subepithelial connective tissue graft in conjunction with a coronally advanced flap remain as the gold standard therapy for the treatment of single gingival recession defects? A systematic review and network meta-analysis. J Periodontol. 2022;93(9):1336-1352. doi:10.1002/JPER.22-0167

2. Barootchi S, Tavelli L, Zucchelli G, Giannobile WV, Wang HL. Gingival phenotype modification therapies on natural teeth: A network meta-analysis. J Periodontol. 2020;91(11):1386-1399. doi:10.1002/JPER.19-0715

※ 本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療の推奨を行うものではありません。歯肉移植の適応や効果はお口の状態によって異なります。具体的なご相談は当院までお気軽にお申し付けください。